_ 選択公理オフ当日。途中参加の人も含めて総勢12名という想像以上の規模になった。世話人のAC厨alg_dさんお疲れ様でした。
憶えている限りの内容としては、簡単な自己紹介→参考文献紹介→選択公理(AC)の定義→ウォーミングアップとして「コンパクト空間の閉部分空間はコンパクト」→「AC → 任意の非空集合に群構造が入る」→「任意の非空集合に群構造が入る → 整列可能定理(WOT)」→「WOT → AC」(ここまでalg_dさん)→(ここからtimewalker_saさん(←多分)に交代)「AC → バナッハ・タルスキ」→(ここからMarriageTheoremに交代)「AC → Zornの補題(超限帰納法不使用)」、と進んで私が事情により中座したので後の展開はわからない。でもTwitterでの様子を見るとあの後1時間ぐらいは続いていたのかな。
自己紹介では、殆ど学生さんばかりでひょっとしたらプロの数学者は自分しかいないのではなかろうか、という状況であることが判明してちょっと気が引き締まった。
参考文献紹介では、alg_dさんが鞄を開けて次から次へと本を取り出す様子(全部で10冊ぐらいはあったと思う*1)や、「これはゼルプスト殿下の訳した本です」「この本は値段が安いし図が多く載っていて良いけれども、1ページ目で挫折します」(←細部は正確ではありません)という紹介が印象的だった。
ACの定義は省略する予定だったようだが、学部1年生(!)の参加者もいたのでちゃんと定義から始めるように予定変更。
「コンパクト空間の閉部分空間はコンパクト」では、素朴な方針で証明するとACを使ってしまうことと、ACの使用を回避する証明があることを紹介していて、導入として素晴らしいと思った。
「AC → 任意の非空集合に群構造が入る」は、しばらく前にTwitter上で話題になっていた、無限集合とその有限部分集合全体がZFCで対等(*)なことを踏まえて、有限部分集合全体に対称差で群構造を入れる方針を採用していた。時間の都合上(*)の証明は省略。それと、順番が前後するけれども、ACが無いときにどんな具合で群構造の決して入らない非空集合を構成するのかという雰囲気を紹介していた。
「任意の非空集合に群構造が入る → WOT」は、以前くるるさんから教わったらしい*2、与えられた集合に単射で埋め込めない順序数の存在を利用する方法を採用していた。証明の途中、集合Xに単射で埋め込める順序数全体のクラスが集合になるかどうか(まぁなるとは思うけど実際にどう証明するのか)が気になってしばし考えたのだけど、P(P(P(X)))(Pは冪集合の記号)ぐらいまで取っておけばまぁ足りそうだから大丈夫なのだろう。
「WOT → AC」は、当初の予定ではACとWOTの同値性だけを(証明抜きで)注意して終わりにするつもりだったみたいだけど、ここで必要なのは「WOT → AC」の向きだけでそれは簡単にできるからということでお願いして証明してもらった。図らずも、無意識にACを使ってしまう例とそれを回避する技法の例を再び提示することになったので予想以上の収穫だったと思う。
「AC → バナッハ・タルスキ」は、時間の関係で途中いくつか証明を省略した箇所はあったものの、基本的には『バナッハ・タルスキーのパラドックス』(砂田利一著)の方針に沿った証明を完結させていた。力作だったと思う。
で、自分が担当した「AC → Zorn」の超限帰納法を使わない証明については、最初にZornの補題のステートメントを間違えるというボケから出発して、最後は帰宅する時間になったという理由で証明の一番重要と思われる補題をExerciseにして中座するという、いまいち締りのない発表になってしまった。途中をもっと要領良く進めれば件の補題を証明する時間も捻出できたはずで、やはり時間配分が上手くないなぁと反省。本当は別のネタも仕込んでいたのだけど、それは第2回以降(があれば)に取っておくことにしよう。
何はともあれ、濃密な数学の時間を満喫することができて、頭の中の数学を考える部分がちょっと活性化したような気がした。有意義な時間を過ごせたと思う。改めて世話人のマジ公理の人alg_dさんに感謝したい。
*1 10/13追記:全部で7冊だったそうです
*2 10/13追記:くるるさんから教わったのは、ACがあると群構造だけじゃなく体構造など色々な構造が入れられる、という話のことだったそうです
最近のツッコミ↓
先日はお疲れ様でした。ツォルンの補題を超限帰納法を使って示す方法って(選択公理)→(整列可能定理)を示したあとじゃないときびしくないですかね?帰納法って整列集合に対してしか力を発揮しないので。直でもいけるようならぜひ教えてください。
コメントありがとうございます。先日はお世話になりました。ご質問の件ですが、私見では先に整列可能定理を準備しておいたとしても、Zornの補題の証明において全順序部分集合ごとに上界を選ぶ手順が少し簡単になる程度で、非有界な全順序部分集合を構成するところは結局選択公理から直接示す場合と大差ない論証をすることになると思います。(整列可能定理を上手く使って別の方針で証明できる可能性はとりあえず考えないことにします。)時間が取れたら、超限帰納法を使って選択公理→Zornの補題を直接示す方法も書いてアップしようと思っています。
超元帰納法使った証明のっている本が見つからなかったので、アップしてくれるとありがたいです
遅くなりましたが、以前アップした「超限帰納法抜きでAC → Zorn」に超限帰納法を使った証明を追記しました。ご確認くださいませ。
上の「→」は「→」のつもりでした。