_ (11/2記:この日は某大学での非常勤講義二日目(3コマ目&4コマ目)だったのだが、講義で気合を入れてしゃべりすぎたせいかひどく疲れてしまい、夕食後に気絶するように眠り込んでしまった。)
_ 休日。案の定というか、日記がだんだん遅れ気味になっているので遅れを取り戻すなど。あと、独りの時間に選択公理オフ用のネタをちまちま準備(挙げられている命題の証明を考えるなど)しているのだが、検索しても定義のわからない用語があったりして悶絶している。
_ Twitter経由で知ったネタ。大学教員をネタにした人生ゲームがあるらしい。こういう(自虐的な)ユーモアは嫌いではない。
_ (11/8記:月末の出張の手続きをしてから二日後の国際会議発表のスライド作りをするつもりが、出張の宿の確保に手間取ったためスライド作りまで手が回らないまま帰宅。夜中に8割方スライドを完成させたものの最後まで終わらなかったので、残りは翌日。)
_ (11/10記:情報セキュリティ系の某国際会議初日。一応、広報担当という実行委員の一員ということで、会場設営を手伝うために早めに会場入りするよう求められていたのだが、優秀な事務スタッフさん&学生さんのおかげで会場に着いたときには殆ど会場設営が終わっていた。よかったよかった。
広報担当としては最も気になる参加者数についても、どうやら例年程度の参加者数は確保できた模様で、ほっと一息。)
_ (11/10記:某国際会議二日目。自分の発表については、色々ばたばたしていて直前のシミュレーションがあまりできなかったわりにはまともな発表になったかな、と思う。何というか、事前の入念な準備がなくても英語で発表できるようになったのは英語力が向上したと言えるのだろうけど、だからといって事前の準備が疎かになるのはあまり良い傾向とは言えないだろうなぁ。
夜のバンケットでは最優秀論文賞(&最優秀学生論文賞)の発表と表彰があり、一応自分も候補者の一人ということで最低限の気構え(といっても、発表のときにトイレなどで席を外さないようにする程度だけど)をしておいたものの、そちらに関しては取り越し苦労に終わった。で、気楽になったところで他の色々な表彰の写真撮影に勤しんでいたところ、いきなり表彰者として自分の名前が呼ばれたので驚いた。どうやらContribution Award
、日本風に言うと「実行委員頑張ったで賞」なる賞を頂いたらしい。表彰されるほど仕事したのかどうかは意見の分かれるところだと思うのだけど、褒められるのは嬉しいので喜んで賞状を受け取ってきた次第。
なお、これが私にとって初めての受賞ということになるので、ウェブページの履歴書などに記載したらどうかと妻に勧められたのだけど、受賞歴が「頑張ったで賞」だけというのは何となく格好が付かない気がするため、研究結果で何か受賞するまではおあずけということにしようと思う。)
_ (11/12記:この日は通常なら中央大での勉強会に参加するところなのだが、年末調整の書類提出〆切ということでしぶしぶ職場に向かった。なのに判子を忘れて書類を提出できないという痛恨の失敗をしてしまい深い悲しみに包まれた(書類自体は週明けまで待ってもらえることになったのだけど)。)
_ 選択公理オフ当日。途中参加の人も含めて総勢12名という想像以上の規模になった。世話人のAC厨alg_dさんお疲れ様でした。
憶えている限りの内容としては、簡単な自己紹介→参考文献紹介→選択公理(AC)の定義→ウォーミングアップとして「コンパクト空間の閉部分空間はコンパクト」→「AC → 任意の非空集合に群構造が入る」→「任意の非空集合に群構造が入る → 整列可能定理(WOT)」→「WOT → AC」(ここまでalg_dさん)→(ここからtimewalker_saさん(←多分)に交代)「AC → バナッハ・タルスキ」→(ここからMarriageTheoremに交代)「AC → Zornの補題(超限帰納法不使用)」、と進んで私が事情により中座したので後の展開はわからない。でもTwitterでの様子を見るとあの後1時間ぐらいは続いていたのかな。
自己紹介では、殆ど学生さんばかりでひょっとしたらプロの数学者は自分しかいないのではなかろうか、という状況であることが判明してちょっと気が引き締まった。
参考文献紹介では、alg_dさんが鞄を開けて次から次へと本を取り出す様子(全部で10冊ぐらいはあったと思う*1)や、「これはゼルプスト殿下の訳した本です」「この本は値段が安いし図が多く載っていて良いけれども、1ページ目で挫折します」(←細部は正確ではありません)という紹介が印象的だった。
ACの定義は省略する予定だったようだが、学部1年生(!)の参加者もいたのでちゃんと定義から始めるように予定変更。
「コンパクト空間の閉部分空間はコンパクト」では、素朴な方針で証明するとACを使ってしまうことと、ACの使用を回避する証明があることを紹介していて、導入として素晴らしいと思った。
「AC → 任意の非空集合に群構造が入る」は、しばらく前にTwitter上で話題になっていた、無限集合とその有限部分集合全体がZFCで対等(*)なことを踏まえて、有限部分集合全体に対称差で群構造を入れる方針を採用していた。時間の都合上(*)の証明は省略。それと、順番が前後するけれども、ACが無いときにどんな具合で群構造の決して入らない非空集合を構成するのかという雰囲気を紹介していた。
「任意の非空集合に群構造が入る → WOT」は、以前くるるさんから教わったらしい*2、与えられた集合に単射で埋め込めない順序数の存在を利用する方法を採用していた。証明の途中、集合Xに単射で埋め込める順序数全体のクラスが集合になるかどうか(まぁなるとは思うけど実際にどう証明するのか)が気になってしばし考えたのだけど、P(P(P(X)))(Pは冪集合の記号)ぐらいまで取っておけばまぁ足りそうだから大丈夫なのだろう。
「WOT → AC」は、当初の予定ではACとWOTの同値性だけを(証明抜きで)注意して終わりにするつもりだったみたいだけど、ここで必要なのは「WOT → AC」の向きだけでそれは簡単にできるからということでお願いして証明してもらった。図らずも、無意識にACを使ってしまう例とそれを回避する技法の例を再び提示することになったので予想以上の収穫だったと思う。
「AC → バナッハ・タルスキ」は、時間の関係で途中いくつか証明を省略した箇所はあったものの、基本的には『バナッハ・タルスキーのパラドックス』(砂田利一著)の方針に沿った証明を完結させていた。力作だったと思う。
で、自分が担当した「AC → Zorn」の超限帰納法を使わない証明については、最初にZornの補題のステートメントを間違えるというボケから出発して、最後は帰宅する時間になったという理由で証明の一番重要と思われる補題をExerciseにして中座するという、いまいち締りのない発表になってしまった。途中をもっと要領良く進めれば件の補題を証明する時間も捻出できたはずで、やはり時間配分が上手くないなぁと反省。本当は別のネタも仕込んでいたのだけど、それは第2回以降(があれば)に取っておくことにしよう。
何はともあれ、濃密な数学の時間を満喫することができて、頭の中の数学を考える部分がちょっと活性化したような気がした。有意義な時間を過ごせたと思う。改めて世話人のマジ公理の人alg_dさんに感謝したい。
*1 10/13追記:全部で7冊だったそうです
*2 10/13追記:くるるさんから教わったのは、ACがあると群構造だけじゃなく体構造など色々な構造が入れられる、という話のことだったそうです
_ 昨日の日記で選択公理オフのレポートめいたものを書いたところ、普段の10倍ぐらい(文字通り桁違い)の人数の方々が来訪された模様。このことから、選択公理を使うと3次元単位球だけでなく日記の読者も増やせるということが実証された。
_ 以前の日記に書いた、集合論の話ではないけれども主定理の証明に超限帰納法を使った論文は先日無事採録され、しかも早くもオンライン版が公開された。採録通知が来てから1週間ぐらいでオンライン版公開とか仕事早すぎるだろう、と驚愕。
_ 今月号の「数学セミナー」の巻頭言を読んでいたら、「…したがって、同じ公理を認めた集団の中で、矛盾する定理が証明されることはない。矛盾する主張があったなら、それはいずれかの証明の中に誤りがあるということにほかならない。…」という一節があるのを見つけた。考えている公理系が無矛盾であれば確かにそうなのだが、考えている公理系が無矛盾とは限らない(というか、ゲーデルの不完全性定理があるので、大抵の場合、ある公理系が無矛盾であったとしてもその無矛盾性はその公理系の内部では証明できない)ので、上記の引用部の内容は数学的には誤りということになる。
で、まぁ誤りは誰にでもある*1のでそれ自体は置いといて、このことをきっかけに現在の日本の数学科における講義編成のあり方について考えを巡らせた。よくよく考えてみると、私自身、教養学部時代に記号論理学の選択授業を履修してはいたものの、所謂数学基礎論に関する内容を必修科目の講義で習ってはいないことに気が付いた。つまり、原理的には数学基礎論方面の内容を何一つ知らないとしても学位が取れてしまうというわけである。他の理系学科ならともかく、「数学科」を名乗る学科で、現代数学の拠って立つ基盤をきちんと学ぶことなく学位が取れてしまう状況ははたしてよいのだろうか、と心配になった次第である。現実的に考えると、数学基礎論を各大学の数学科の必修科目にするとして、ちゃんと数学基礎論を教えられるだけの人数を確保できるのだろうかといった問題もあるかもしれないが、どうにか状況を改善できないものかなぁと思っている。
*1 私自身、先日の選択公理オフでZornの補題のステートメントを間違えて板書したばかりだし
_ (11/16記:この日は某大学での非常勤講義三日目だった。擬似乱数生成器の計算量的識別不可能性の定義を述べてその背景や気持ちの説明をするだけで、2コマの間に述べ1時間半ぐらい時間を使う羽目になった。難しいだろうなぁとは感じつつ、あの定義ほんともう少し簡単にならないものかなぁと思った。)
_ (11/23記:大学に調べ物に行ったら、帰りのバスがとある鉄道路線の事故のあおりをくって大幅に遅延していて難儀した。なんでも、事故の影響でバス経路にある踏切が開かなくなっていたらしい。電車の相互乗り入れの副作用で一つの路線の遅延が別の路線に飛び火することが増えているけれども、電車からバスへ飛び火するとは驚きである。)
_ (11/23記:この日は某大学での非常勤講義の最終日だった。前回の2コマ目でBlum-Blum-Shub擬似乱数生成器の構成法を紹介していたので、今回の1コマ目ではその安全性証明、というより「安全性を計算量仮定に帰着する」という方法論自体についての紹介を行った。講義の最後となる2コマ目では、確率的アルゴリズムの具体例として、Miller-Rabin素数判定法とShamirの秘密分散法について紹介した。講義全体を通して、我ながらかなり飛ばし気味の内容だったように思うけれども、受講者の方々に楽しんでもらえていれば幸いである。)
_ (11/29記:この日は以前よりお世話になっている某氏のドコモ・モバイル・サイエンス賞受賞記念パーティーに出席してきた*1。ご本人のスピーチの他に恩師や上司など色々な方からの祝辞があったのだけど、ご本人も含めてユーモア溢れるスピーチばかりで、氏が周囲から愛されている様子が伝わってきてとっても心温まるパーティーだったと思う。なお、途中で受賞者ご本人から「Twitterでのつぶやき現金厳禁」という断りの下極めて興味深い情報が公開されたのだけど、内容はとてもここには書けない。)
*1 正式には「その方が受賞までの間にお世話になった皆様へのお礼の会」ということらしいのだが、私がその方にお世話になったことはあっても逆は記憶にないので、記念パーティーに招待されたのだと解釈している
_ (12/6記:SITA2011という情報系のシンポジウムに参加。翌日朝から本番ということでこの日は会場へ前日入り。ウェルカムパーティーを回避してホテルの部屋で仕事を片付けていた。)
最近のツッコミ↓
_ timewalker [先日はお疲れ様でした。ツォルンの補題を超限帰納法を使って示す方法って(選択公理)→(整列可能定理)を示したあとじゃな..]
_ MarriageTheorem [コメントありがとうございます。先日はお世話になりました。ご質問の件ですが、私見では先に整列可能定理を準備しておいたと..]
_ timewalker [超元帰納法使った証明のっている本が見つからなかったので、アップしてくれるとありがたいです]
_ MarriageTheorem [遅くなりましたが、以前アップした「超限帰納法抜きでAC → Zorn」に超限帰納法を使った証明を追記しまし..]
_ MarriageTheorem [上の「→」は「→」のつもりでした。]