_ 以前の日記に書いた、集合論の話ではないけれども主定理の証明に超限帰納法を使った論文は先日無事採録され、しかも早くもオンライン版が公開された。採録通知が来てから1週間ぐらいでオンライン版公開とか仕事早すぎるだろう、と驚愕。
_ 今月号の「数学セミナー」の巻頭言を読んでいたら、「…したがって、同じ公理を認めた集団の中で、矛盾する定理が証明されることはない。矛盾する主張があったなら、それはいずれかの証明の中に誤りがあるということにほかならない。…」という一節があるのを見つけた。考えている公理系が無矛盾であれば確かにそうなのだが、考えている公理系が無矛盾とは限らない(というか、ゲーデルの不完全性定理があるので、大抵の場合、ある公理系が無矛盾であったとしてもその無矛盾性はその公理系の内部では証明できない)ので、上記の引用部の内容は数学的には誤りということになる。
で、まぁ誤りは誰にでもある*1のでそれ自体は置いといて、このことをきっかけに現在の日本の数学科における講義編成のあり方について考えを巡らせた。よくよく考えてみると、私自身、教養学部時代に記号論理学の選択授業を履修してはいたものの、所謂数学基礎論に関する内容を必修科目の講義で習ってはいないことに気が付いた。つまり、原理的には数学基礎論方面の内容を何一つ知らないとしても学位が取れてしまうというわけである。他の理系学科ならともかく、「数学科」を名乗る学科で、現代数学の拠って立つ基盤をきちんと学ぶことなく学位が取れてしまう状況ははたしてよいのだろうか、と心配になった次第である。現実的に考えると、数学基礎論を各大学の数学科の必修科目にするとして、ちゃんと数学基礎論を教えられるだけの人数を確保できるのだろうかといった問題もあるかもしれないが、どうにか状況を改善できないものかなぁと思っている。
*1 私自身、先日の選択公理オフでZornの補題のステートメントを間違えて板書したばかりだし
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